武藤類子さん講演会報告

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2013.1.19 武藤類子さん講演会(府中ルミエール)

1月19日(土)に福島県田村市から武藤類子さんをお招きして講演会「今福島でおこっていること」を行いました。武藤さんは2011年9月の脱原発集会での感動的なスピーチ「福島からあなたへ」が話題となり、出版もされていることから、たくさんの方が関心をもってご参加下さいました。 武藤さんは講演の最初に「福島の人たちに心を寄せ、支援をして下さってありがとうございます」と感謝の言葉を述べられ、今福島でおこっていること、私たちが知らされていない多くのことをとてもわかりやすく語って下さいました。

 福島第一原子力発電所は、事故から1年10か月が経った今も使用済み核燃料が格納されている第4号機はいつ壊れるかわからない危険な状態のままであり、周辺では毎時73シーベルトという高い放射線量が観測されるところもあります。原発内で高い放射線を浴びて被ばくしながら瓦礫の撤去作業を行うのは、作業員の人たちであり、多くは田畑で作業ができなくなった地元の人たちです。

 昨年1月に帰村宣言をした川内村は、土を削り、木を切って除染作業が行われていますが、時間が経つにつれまた放射線量は戻ってしまいます。

原発から40㎞の鮫川村(いわき市の水源地)では、住民が知らない間に焼却場実験炉の建設が進められ、8000ベクレル以上の高濃度の放射性物質の焼却が始められようとしています。

事故から1年がたったころから、「福島を事故の前に戻そう」と子どもたちの屋外活動は制限を解除され、運動会も行われるようになりました。安全キャンペーンを行い、“正しく怖がろう放射線”と標語も作られ、学校では放射線の安全教育も行われています。

昨年秋から、福島では国際原子力ロビー(原子力推進連合体)によって「エートス」プロジェクトが進められています。これは、チェルノブイリ事故以降ベラルーシで行われたエートスプログラムを参考としながら、住民が主体となって地域に密着した生活と環境を回復させていく実用的放射線防護文化の構築を目指すものです。一見すると良いことを目指しているようにも取れますが、ベラルーシのエートスプログラムには、原発事故の被害を極力小さく見せ、住民が移住しないことを自主的に選んだように見せかけながら住民を留まらせたことなど、国際原子力ロビーの恐ろしい意図が隠されていました。

原発事故が起こる前、武藤類子さんは、福島県船引町の里山を耕して家を建て、太陽光のエネルギーを使ってお風呂を沸かし、かまどの上で石をあたためて湯たんぽにし、薪で火をおこしてドングリを炒って食べるなど自然の中での暮らしをされていました。それは、1986年のチェルノブイリ原発事故で、原発に反対し、自らの生活でも脱原発を実践しようと始めた里山での生活だということです。しかし、福島原発事故によって薪は燃やすこともできず、山菜を採って食べることもできなくなってしまいました。

福島原発事故によって福島県民だけでなく日本中の多くの人が傷ついている。そこから回復していくためのプロセスと考え、武藤さんは「福島原発告訴団」の団長となりました。東京電力や国の側の刑事責任を追及するために、昨年6月1324人の福島県民による第一次告訴を行い、11月には全国の被害者13262人が告訴人となって第二次告訴を行いました。告訴はすでに受理され関係者の事情聴取などが始められていますが、この告訴において、強制捜査を含む厳正な捜査・起訴をもとめて署名活動が行われています。

 政権が代わり、原発再稼働が再び推進されようとしている今、原発事故の原因を明らかにして捜査が行われるよう、この告訴の行方を見守っていきたいと思います。

福島原発告訴団HP http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/