映画「TRASHED-ゴミ地球の代償」と 高田秀重先生講演会「プラスチックによる海洋汚染のいま」報告

4月3日(日) 映画「TRASHED-ゴミ地球の代償」と
高田秀重先生講演会「プラスチックによる海洋汚染のいま」報告

捨てられたプラスチックが海に流れている!
プラスチック屑混じりの魚を食べますか? レジ袋やめますか?

高田先生12012年に公開された映画は、レバノンの海岸のゴミの山、インドネシアの首都を流れる川を埋め尽くすゴミと、その周りで暮らす人々の様子に息を呑み、海にプラスチック汚染が広がっている調査と実態が描かれていて、こんなにも…と気持ちが沈みました。
 それに続けて、東京農工大学農学部環境資源学科の高田秀重先生の1時間にわたる講演では、映画公開の後も、調査や研究でさらに深刻さが増していることが明らかされました。そのお話を要約します。

 



 ハワイ島カミロビーチ世界では年間3億トン生産されており、石油産出量の8%がプラスチック生産に使われている。そしてそのうち半分は、一度きりしか使用しない「容器包装」(レジ袋、ペットボトル、食品トレーなど)である。日本では1人で1年に数10㎏のプラゴミを出している。

 

 

 



イースター島★日本はリサイクルが進んでいると言われるが、リサイクルにも費用とエネルギーが浪費されている。リサイクル率100%でもない。生産量が増えれば費用もかさみ、リサイクルから外れたごみは最終的に海に行く。
★もともとは私たちの生活で使われて廃棄されたものが、次第に小さく砕かれて海水中を漂っている。世界では毎年約800万トンのプラスチックが海へ流入している。大小さまざまな大きさのプラスチックゴミが、国境に関係なく漂流・漂着し、魚は餌と一緒に取り込み、餌と一緒に捕食している海鳥もいる。
PCBs濃度★プラスチックは自然界で数十年は分解せず残る。最近の研究では、プラスチックの破片は海水中の有害化学物質を吸着し、有害化することがわかってきた。プラスチックに添加されるノニルフェノール(環境ホルモンとして問題になった)も残り、PCBなどの毒物も吸着している。生物がプラスチック破片を取り込むと、有害化学物質のほうは排出されず溜まり濃縮していることがわかってきた。海洋プラスチックゴミは、有害化学物質を生態系に運ぶ「運び屋」となっている。
★東京湾のカタクチイワシも食べていることが調査してわかった。それらは、小さく砕かれたマイクロプラスチックという5mm以下のプラスチックだった。
★最近、海洋のマイクロプラスチックが、世界的に問題となってきた。洗濯で出される化学繊維の屑や、化粧品のスクラブ(マイクロビーズ)や研磨スポンジのメラミンフォーム屑なども問題視されており、日本でやっと環境省も問題にし始めた。
★昨年環境省が行なった日本周辺海域の調査では、日本近海は、世界の平均の27倍もの高い密度のプラスチックが浮いていることがわかった。何も手を打たないと、海に流入するプラスチックの量はこれから20年で10倍になると言われる。今世紀後半には、海は魚よりもプラスチックの量のほうが多くなるとも言われる。
★大量消費・大量リサイクルでは持続可能な社会とは言えない。少なくとも必要のないプラスチック、特に使い捨てのレジ袋、ペットボトル、コンビニ弁当箱から削減すべき。私たちは「子孫から大地を借りて生きている」(アメリカ先住民の言葉)なのだから。

高田先生講演会府中市内にある東京農工大学農学部の先生なので「会場は大学のすぐ近く。映画を観たあとに私の話を聞いてほしい」と2回も来て講演してくださった先生の話は、「生活を見直さなくては…」と誰もがショックを受けたことが、アンケートからうかがえました。

 日本は海の恵みに囲まれています。しかしいまや廃棄物の処分地のようでした。被害を受けるのは海の生き物たち。でも最終的に私たちに還ってくるでしょう。水俣病、カネミ油症(PCB汚染)の教訓は…と愕然とします。工業化と過剰な浪費社会がこのような事態を招いています。先生の調査研究は、最近よく報道されています(たとえば東京湾の調査について。4月2日の読売新聞)。報道に注目し、出来ることから少しでも…という決意を新たにした企画でした。


 

当日の高田秀重先生の講演内容をまとめました。こちらもぜひご覧ください。
PDF版も用意しました。