『プラスチックによる環境汚染のいま』高田秀重先生講演会 講義録

【2016年4月3日 高田秀重先生講演会の講義録】

プラスチックによる環境汚染のいま

~プラスチックの屑混じりの魚を食べますか? レジ袋やめますか?~

映写資料とともにお話しいただいた内容を、主催の府中・生活者ネットワークでまとめたものです。文中の写真やデータは、当日の配布資料から一部転載したものです

 ◆映画「TRASHED‐ゴミ地球の代償」の背景       

いまお見せしている写真の背景の絵(浮世絵)は江戸時代に書かれたものです。当然その時代にはプラスチックはなくてごみはありました。木や紙でできているごみなので、いずれは分解してしまうので海の生態系に問題は起きておりません。

この数十年で海にプラスチックのごみが入ってくることで、海の先住民である生物との間でいろいろな問題を引き起こしています。そういう問題について、今日はご紹介できればと考えています。

 

ご覧になった「TRASHED‐ゴミ地球の代償」いう映画の前半はプラスチックごみについて扱ったものです。ではそもそもそのプラスチックはいったいどのくらい地球で作られて、私たちが使ってごみになっているかということから始めたいと思います。世界で年間約3億トンが作られています。この3億トンというのは、なかなかぴんと来ないかもしれませんが、石油産出量の8%がプラスチック生産のために使われているということになります。こういった(例示)プラスチックももともとは石油から作られています。液体上の石油が形を変えて固体状になっているというだけで、原材料は石油ということです。

8%のうち半分の4%が原材料となり、半分の4%、すなわち原材料と同じ量の石油が作るための製造、加工のエネルギー、それから中東などからの輸送のエネルギーなどとなります。同じ量の石油が加工、輸送に使われているということが、リサイクルをすればよいのかということを考えるときに大事な数字となってきます。

こうして大量に作られているプラスチックの約半分が容器包装です。使い捨てで、1回使ったらそれっきりでほかの用途では使われないプラスチックです。どのくらい日本の私たちが使っているかということを、数値から見てみます。

1年間で数10㎏くらい、1人でプラスチックごみを出しています。何も意識しなければペットボトルは3日に1本くらい飲んでいるかもしれません。そうすると年間平均100本くらいごみとして出している勘定になります。レジ袋も意識しなければお店に入るたびに供給されてしまいますので、毎日1人1枚くらいはもらってしまうかもしれないとすると、1人年間で300枚くらい使っていることになります。そのほかにも食品のパッケージ、こういうコンビニのお弁当箱などで使っていて、だいたい1世帯で1日1㎏くらいのプラスチックごみが出ると計算されています。

こうして発生したゴミをどうやって処分するかというと、その処分の問題点が映画の中で話されてきました。埋め立てた時の問題、燃やした時の問題、陸上での管理を免れて海に入った時の問題について、映画の中で説明されてきました。

 

◆「環境ホルモン」となる化学物質が、プラスチックに添加されている

しかしその中で説明が足りなかった点、そもそもプラスチックというのは飲食に使った場合、添加剤としていろいろな化学物質が入っていますので、そういう化学物質が私たちの身体に曝露される、私たちの身体がプラスチックを使用することによって添加剤にさらされるという問題について、初めに少しお話したいと思います。

このことを問題提起したのは、映画の中にも出てきましたボストンのタフツ大学教授のアナ・ソトさんという人です。彼女が実験の最中に、実験に使っている器具からノニルフェノールという環境ホルモンが溶け出してきて、それがヒトの乳がん細胞の異常な増殖を引き起こすことを見つけました。それが実験の何に入っていたかということを調べていくと、実験に使っていたプラスチックのプレートで、そこから添加剤が溶け出して、こういう乳がん細胞の異常増殖が起こったということを報告しています。

プラスチックは石油から作られている高分子のものです。非常に大きな分子で作られていますので、それ自体は私たちの身体に侵入することはできないので無害なものということになります。しかしポリマーだけでは製品にできません。そのプラスチックの性能を維持するためにどうしても添加剤を加えます。だんだん紫外線などで劣化してボロボロになりますが、それを遅らせるために酸化防止剤というのが大抵加えられますし、それ自体が固いモノなので柔らかくするために加えられるクスリもあります。プラスチック同士がくっついてしまってはがれにくくなって使いにくくなるのを防ぐために使われるクスリ(静電防止剤)もあります。いろんな種類の薬剤が加えられて、それで製品が成立しています。添加剤の入っていないプラスチックを見つける方が逆に難しいくらいです。

添加剤の中には一部有害なものも含まれていて、今お話したような環境ホルモンとなるノニルフェノールも含まれています。アナ・ソトさんが実験器具から乳がん細胞の異常な増殖を引き起こすことを発見したのは、乳がん細胞は本来、ホルモンが増殖させるのですが、添加剤として加えられていたノニルフェノールが身体の中でそのホルモンのように代わりに振る舞うために起こったということになります。環境ホルモンといわれ、ホルモンとして振る舞うために、いろんな添加剤が問題を引き起こしています。子宮内膜症とか乳がんといった女性特有の病気が起こりやすくなるとか、精子数の減少、生殖器の委縮など生殖系の異常が起こるということが報告されています。こんな物質がアナ・ソトさんの実験では実験器具に含まれているということだったので、そうだとすれば私たちが日常的に使うプラスチックにも入っているのではないかということで、もう10数年前になりますが、府中市内の小売店やスーパーなどでいろんなプラスチック製品を買いまして、ノニルフェノールの分析を1998年に行ないました。

50品目買って、ノニルフェノールが高い濃度で検出された製品を表にしました。ポリプロピレン製の皿、フードコンテナーのふたから出てきますが、一番高い濃度で出てきたのが使い捨てのコップです。これはだんだん酸化しますと劣化してきて透明感がなくなるので、透明度を保つために加えられる薬剤の酸化防止剤からノニルフェノールができてきます。使い捨てのコップですから、今日は桜が満開で、屋外のお花見で提供される場合があるでしょうが、こんなモノからもノニルフェノールが出てきます。

もちろんポリマー自体は製品の表示が義務付けられています。しかし添加剤については特に法律で何を加えているか書く必要はありません。私たち消費者は製品の中でノニルフェノールが入っているものを避けることはできません。私たちが予防原則に基づいて予防的に取れる措置として出来ることは、プラスチックを使わないで済むところではガラスとか金属製のものとか陶器とかを使うことです。

メーカーでさえもおおもとでは知らずに、途中や最終の加工するところで入れているので、なかなか消費者からわかるシロモノではないということです。出来るだけ避けたほうがよいということです。調べた50品目だけでなく、ほかにも食品包装用のラップであるとか、ラップで握られたおにぎりからも環境ホルモンが検出されるということも報告されています。東京都の調査ですが、アイスクリームの容器のプラスチック製のものからも検出されています。アイスクリームは比較的油分が高いので、アイスクリームに溶け出してくるということがわかっています。

あと、乳児の歯固め。シリコーン製の歯固めからはノニルフェノールが出てくるということがわかっていまして、ごみになる以前にも、使う段階で注意しないと、私たちはプラスチックによって化学物質に曝露されるということになってきます。

もうひとつ身近な例として、ペットボトルの蓋(ふた)があります。ペットボトル自体はポリエチレンテレフタレートという、まさに「PET」で作られていて有機系の添加剤をほとんど必要としない製品です。しかし蓋は同じ素材で作っていると密着性がありませんので、通常ポリエチレンで作られていまして、柔軟性を持たせるためや、酸化してボロボロにならないために添加剤が加えられていて、添加剤に由来してノニルフェノール=環境ホルモンがいくつかの蓋から出てくるということがわかっています。

 

◆埋め立ても焼却も問題が多い

製品中に入っているということは、それを廃棄した後に、埋め立てますとその添加剤が流れ出していくことになります。それが映画の中で出てきます、埋め立て処分場の浸出水というものです。ごみを埋めたところに雨が降って、ごみの中には水分を含んだモノもありますからその水分が流れて浸みだした黒い水が処分場のごみの下、下流から出てきます。浸出水の中にはいろんな化学物質があって、中には有害な化学物質が高い濃度で含まれています。最終的には地下水になったり、川から海に流れていくということで、ごみ処分場の浸出水も問題になってきます。

日本の埋め立て場ではこういった浸出水は処理をして流しており、下流で必ずしも問題があるという訳ではありませんが、そういう施設をつくるのにも埋め立てするのにも費用が掛かるということを考えていきたいものだと思います。

じゃあ、埋め立てがだめなら燃やせばよいのかというと、その問題点もこの映画の中でたくさん取り上げられてきました。いちばんの問題点は燃やし方が悪いとダイオキシンという有害化学物質が生成してくるということになります。どういうことかというと低い温度で、空気の供給が十分でない状態で燃やすと、いろんな有害な化学物質が発生してきます。代表的なものがダイオキシンです。

こういう問題が日本では1998年から2000年くらいに非常に問題になりまして、それを受けてダイオキシン特別措置法が作られました。大型の高性能な焼却炉に集約させて酸素を十分供給して高温で燃やすということが行なわれるようになりましたが、残念ながらそういったごみ焼却炉は非常に建設にもコストがかかります。今の技術を使ったらごみを燃やしてもダイオキシンが出てこないようにすることはできますが、高温で燃やして出てきたものはバグフィルターで捕捉するということには、非常にコストがかかります。

私は調布市に住んでいるのですが、調布市が3年前に三鷹市と新しいごみ焼却施設(ふじみ衛生組合)を作りました。2つの市合わせて40万人の人口ですが、100億円かかりました。毎年運転に2億円かかっています。ごみ焼却炉にも寿命があります。だいたい30年くらいです。ダイオキシン特別措置法で作られた焼却炉はここ数年で寿命を迎えることになりますので、これから作りなおしていかなければいけない自治体が多く出てきますが、1基作るのに100億円といったことを、未来永劫にわたって自治体で出し続けられるのかということも大きな問題になってくると言えます。仮に100億円出せるとしても、敷地は重金属とか高濃度の化学物質やダイオキシンなどで汚染されてしまっている場所で、きれいにしなければ使えないことになります。このようなことが未来永劫続けられるのかといったことは、よく考えたほうがよい問題です。

 

◆ポイ捨てのプラスチックゴミが、世界中の海岸に打ち上げられている

陸上では問題がありながらも処理されていますが、処理できなかったものは最終的に海に出て行ってしまって、いろんな問題を引き起こしているということです。これから海の問題を中心にお話していきます。

年間800万トンのプラスチックが世界で、海に出て行っていると推定されています。海のプラスチックごみ、汚染というと、海水浴など海に遊びに行った人が置き忘れたごみ、近くで捨ててしまったごみが流れているのかな、と感じるかもしれないのですが、そうではないのです。私たちが町の中できちんとごみを捨てないと、海に流れてしまうということです。

最近東京都の廃棄物対策課が作ったポスターがあります。ご覧になった方もいるかもしれませんが、都営地下鉄の中に掛かっていたり、都営地下鉄駅に置いてあるパンフレットの表紙になっていました。「東京のポイ捨てが、太平洋の海ごみになっている。」
https://www.kankyo.metro.tokyo.jp/resource/general_waste/brochure_on_marine_litter_problem_@TMG.pdf)という標語です。海の近くのごみではなく、海から離れた町でポイ捨てしたごみです。レジ袋をポイ捨てして風で飛んでしまっても追いかけませんよね。ペットボトルを落としてもそのままになってしまう場合もありますよね。いろんなところでごみが落ちています。今日も道々をよく見ると、ひとつやふたつ落ちていることに気が付かれると思います。大量に作られていますので、リサイクルとか監視を免れたものが、ごみとなって路上、地上に散乱してしまいます。

そうして路上に散乱したものが、雨が降ると洗い流されます。プラスチックの中に4大プラスチックというのがあります。ポリエチレン(比較的やわらかいプラスチックです)、ポリプロピレン(少し固く、容器になります)、ポリ塩化ビニール(パイプなどに使います)、ポリスチレン(発泡スチロール)です。このうちの初めの2つ、ポリエチレン、ポリプロピレンは、水よりも軽いプラスチックなのです。ですから、雨が降ると洗い流されて側溝に入ります。側溝は川につながっていて、川から海に入っていくということです。水より軽いポリエチレン、ポリプロピレンでプラスチックの生産量の半分以上を占めていますが、そういうものが浮いて流れて、最終的に海に入って行ってしまうことになります。

ですから、単にプラスチックごみの問題は海に遊びに行った時に気をつければいいねという問題ではなくて、私たちの日常生活の中での問題です。ごみ箱があふれることや、花見などイベントの後のごみの散乱が発生源になっているということで、私たちの日常と無縁の問題ではないのです。

海に流れたあとどうなっているかというと、一部は海岸に打ち上げられます。これは私たちの調査ですが、写真はフィリピンのマニラ湾です。熱帯アジアの国々はどこもこのように大量に海岸にごみが打ち上げられていたり、あるいは、ひどい場所では、川が一面ごみでおおわれていることもあります。ただ、ほかの国だけでなく日本も海岸にプラスチックのごみが流れ着いているところがあります。この写真は長崎県の五島列島になります。韓国製のものや中国製のものも流れてきます。もちろん日本製のものもありますが、大量にごみが流れ着いているところもあって、世界的な問題です。ほかの国から日本に来るものもあれば、日本のものは他の国に流れて行くということになり、国境のない世界的な問題ということです。

ハワイ島カミロビーチプラスチックの汚染の問題は、軽いので浮いて遠くまで流されるということです。端的な例がこのハワイのカミロビーチというところの写真です。ビーチ一面にプラスチックのごみが落ちています。ここは海水浴に使うビーチではありませんし、周りに人も住んでいない、ハワイ島の中でもかなり田舎です。そんなところに大量のプラスチックごみが流れ着いています。ラベルを見てみるともちろん英語があってアメリカ本土から来たものもあると思いますが、日本語、ハングルのもの、中国語のものがありまして、遠く太平洋を渡ってこのハワイ島までごみが流れ着いているということであり、遠くまで流れるということがこのプラスチック汚染のひとつの特徴です。使った国だけではなく、流れて、世界的な問題になるということになります。

 

イースター島こちらにもうひとつプラスチックのサンプルで、破片を皆さんに回します。これは私の知り合いのNGOの方が、モアイ像で有名なイースター島の海岸で拾ってきたプラスチックです。こんなプラスチックが、人のほとんど住んでいないような島にも流れ着いているということになります。そして、プラスチックの大きさがだいぶ小さくなっていることがわかります。数ミリくらいの大きさになっています。流れている間に紫外線や波の力でどんどんボロボロになりながら、漂いながら小さくなった形で流れ着いていることがお分かりになると思います。

 

◆海中にもプラスチックが漂流している

海岸に漂着するものだけでなく、一部は大洋の真ん中の海の表面に溜まってきます。溜まる場所があります。海流が海にはありますが、海流の真ん中あたりは、流れもなく風もなく、モノが溜まりやすい場所になります。そういう海流の真ん中にはモノが溜まってくることが、海の現象としておこっています。ただ溜まるものがプランクトンであったり、生物的なものであればいずれは分解してしまいますが、プラスチックですから、数十年は海の中で分解せずに存在しますので、だんだんこういう流れの弱いところに溜まってくるということが、十数年前からわかってきています。

どんなふうにしてそのことを調べるかというと、キャプテンチャールズ・モアたちの調べ方はこうです。海に網を入れます。網と言っても魚を捕まえる網よりもっと小さい目の、動物性プランクトンを捕まえるための0.3mmくらいの目を持った網を使って海に入れてヨットを走らせてやります。そうすると、網の中を海水が通って、海水の中の網の目より大きいものが捕まえられるわけです。それを引き上げて集めるとこういう形になります。これはキャプテンチャールズ・モアが撮った写真になります。本当はこうすると動物プランクトンが取れるはずですね。しかしプランクトン以上にたくさん白とか青い色をしたプラスチックがあるのがわかると思います。実際のサンプルの写真です。このように海の中にあるわけです。茶色のモアモアしたプランクトンもありますが、プランクトンよりも6倍多い量のプラスチックが浮いている海域があるということになります。

ですからプランクトンを食べる魚は、食べると同時にプラスチックも食べる可能性があるということになります。世界でどれくらいのプラスチックがいま海の上を浮いているかということも調べられつつあります。十数年前からキャプテンチャールズ・モアを中心にいろんな研究者が外洋で航海を行なって、どこにどのくらいプラスチックが浮いているかということを調べてきています。それらをまとめた結果がちょうど2年前に出ました。

それがこちらになります。世界の海で5兆個のプラスチックが海の上を漂っていることがまとめられ報告されています。重さにして27万トンということになります。どこに多いかと言いますと、先ほどご紹介した外洋の流れのない部分に溜まっていることがわかってきます。北太平洋、南太平洋、北大西洋、南大西洋、インド洋の流れのないところに溜まっていることがわかりますが、一方で人口密集地の沿岸域にも溜まっていることがわかります。地中海、黒海、ユーラシア大陸の南岸です。中東、インドから東南アジア、日本にかけての南岸部分が、非常にプラスチックの密度が高いです。これは2年前までの結果をまとめたものですので、最近の環境省が行った結果は含まれておりません。

 

環境省が昨年、日本の周辺での調査を行ないました。そうすると、世界のほかの周辺の調査を行なっているところの平均の27倍!の高い密度のプラスチックが日本の周辺に浮いていることがわかってきました。ひとつは日本は大量にプラスチックを使っていますので、そこから出るものもありますが、もうひとつは黒潮の流れのためで、南から日本に海流が流れてきます。中国、東南アジアはプラスチックの海への廃棄量が多いトップ10の中の8か国を占めていますので、ベトナム、フィリピン、インドネシア、中国南部で発生したものが黒潮の流れに乗って日本の周辺に運ばれてきている可能性があります。結果として世界平均よりもかなり高い密度のマイクロプラスチックで、日本の周辺が汚染されていることがわかってきています。

 

◆野生生物が取り込むプラスチック破片

プラスチックの一番大きな問題は何かというと、海の生物が餌と間違えて、というより餌と区別ができずに食べてしまうことであります。

例としてミッドウェイ島のアホウドリの写真を示します。ミッドウェイ島のアホウドリは、ヒナが自分でえさを食べられるようになるまでは、親鳥が沖合に行って、イカとか魚を食べて、胃の上部に貯めておいて、島に戻ってきて口移しでヒナに与えてあげます。その吐き戻したのが、こちらになります。プラスチックの比較的大きなものが見えると思います。こんなものが親を通してヒナに与えられてしまっています。

こんな現象がほかの海鳥についてもおこっているのかどうかということを、北海道の大学の先生と協力して、調査を行ないました。ハシボソミズナギドリという渡り鳥の一種で、一羽500gぐらいの渡り鳥ですが、北半球と南半球の間を渡る数少ない稀少な大規模渡りをする海鳥です。これがベーリング海に来た時に魚を取る網に間違って引っ掛かって死んでしまったものを、許可を得て解剖してみました。12羽解剖してみた結果です。そうすると胃の上部、下部のほうに砂のうという器官がありますが、ニワトリで言うと砂肝にあたり、小さな石とかが入っていて、それで食べ物の消化を良くするような効果もある器官なのですが、ここにプラスチックが溜まっていました。小石ではないのです。

器官を取り出してシャーレの上に開けてみると、いろんな色をしたプラスチックがあることがわかります。こんなものが鳥の体内から出てくるわけです。どんな種類かというと、プラスチックの破片が一番多いです。先ほどお回ししたような、もともとはプラスチック製品が砕けたモノ(フラグメント、レジンペレット)です。それからファイバーという繊維状のもので、漁業のロープ、化学繊維でできた網がほつれたモノかもしれません。あと、プラスチックのシートで、もともとはレジ袋かもしれないモノも見つかっています。スタイロフォームという発泡スチロールもあります。そんなものが海の上を浮いているということです。

どのくらいの量があるかということですが、写真のひとつひとつのパネルが1羽の鳥の中に入っていたものです。重さでは一番少ないもので0.1g、一番多い鳥で0.6gでした。500gくらいの体重の鳥ですので、人間に換算すると100倍になりますから60gぐらいになります。

今この袋に入っているのが60gのプラスチックです。このくらいの量が皆さんの身体の中にあると想像してみてください。ほんとの食べ物を食べる隙間がなくなって栄養失調になるかもしれませんし、これが胃を傷つけるかもしれません。これからお話しますが、ここから化学物質の添加剤や吸着しているものが出てくるという問題があります。

いまは海を漂うプラスチックが増えていますので、いま調べると、海鳥の9割からプラスチックが出てくるだろうということも報告されています。海鳥だけでなく、このようにウミガメからもプラスチックが出てきますし、クジラからも出てきます。いろんな種類の生物を調べてみると、約200種類の生物の胃の中からプラスチックが出てくると報告されています。

 

◆プラスチックは有害な化学物質の「運び屋」

物理的な問題だけでなく、最近では単なるプラゴミではなく、海を漂うプラスチックにはいろんな種類の化学物質が含まれていることがわかってきています。難しい構造式を書いておりますので、これを2つのグループに分けてみます。ひとつには、初めにお話しました添加剤です。プラスチックの性能を維持するために加えられる添加剤が、海を漂っている間にもまだ抜けきらずにプラスチックに存在しています。

それからもうひとつの種類は、周りの海水から吸着してくるもの、くっついてくるものということになります。世界の海の海水中には濃度は非常に低いのですが、汚染物質が溶けています。なぜ濃度が低いかと言いますと、水に溶けにくいからです。水に溶けにくくて逆に油に溶けやすい汚染物質が海の水の中に溶けています。農薬であったり、工業的な油であったりで、水には溶けにくいけれども油に溶けやすい汚染物質が海水の中には非常に低濃度なのですが溶けています。みな人間が作ったもので、最終的にはみんな海に出ているのです。濃度は高いところ低いところありますが、どこの海で測っても残念ながらこの汚染物質は出てきます。

油に溶けやすいので生物の脂に溜まりやすく、生物の脂の中で濃度が高くなって、いろんな問題が出てくる可能性が高い物質ということになります。そういう汚染物質が溶けているのですが、そこにプラスチックがありますと、汚染物質がくっついてどんどん濃縮されます。プラスチックというのは初めに申しましたように石油から作られている、一種の油です。油が固体状になっているのがプラスチックですので、固体状になってもまだ油としての性質を持っています。そのために油に溶けやすい汚染物質がどんどんプラスチックにくっついてくるということがわかっています。周りの海水中に比べますと100万倍くらいの濃度になるくらいくっついてきます。プラスチックが1gあると水1t分の汚染、0.1gで100ℓ分の汚染がくっついてくるということになります。

プラスチック自体はもともとポリマー、無害なものですが、汚染物質がくっついてきて有害化するということになってきます。こういう有害化が世界的に起こっているのかどうか、調べてみようということで、ボランティアの人と一緒に調査を行なっています。インターナショナルペレットウオッチという調査です。世界中の方にインターネットや雑誌を通じて呼びかけて、プラスチックを私たち東京農工大、府中まで送ってもらっています。こんな形で研究室に届きます。プラスチックのごみなら何でもよいという訳ではなく、ある種類のプラスチックを送ってもらって、研究室で分析して、どこの地域のプラスチックがどのくらい有害化しているかを調べて、インターネットで公開したり、送ってくれた方にメールでお知らせするという活動をしています。

 

PCBs濃度一例としてポリ塩化ビフェニールの濃度を示します。各国の海岸のプラスチックに吸着していたPCB汚染物質の濃度です。PCBは、1960年代にトランスとかコンデンサーなどで使われました。さまざまな工業用途の油として使われていた化学物質です。毒性もありいったん環境に出ると、非常に残留性があるということで、1972年に使用禁止になりました。使われている間にカネミ油症という一種の公害、事故が起こっています。食用油に混入したことによって、食べた方が皮膚の障がい、肝臓の障がい、亡くなった方もいます。残念ながら事故で有害だということが結果的に分かって、使用が禁止になりました。

いったん環境に出ると、なかなか分解されないで残り続けます。実は今でも東京湾、大阪湾のような昔から工業が発展していたところの地域の海の水や泥の中ではPCBが残っています。そういうことを反映して、このプラスチックから検出されるPCBの濃度というのは、昔から発展していた先進工業国の都市の地域で高くなっていることがわかります。アメリカの東海岸、西海岸、日本、西ヨーロッパ諸国で濃度が高くなっています。そういうPCBが使われていたからです。この表はその汚染の様子がわかると同時に、もともとは無害なポリマーにも、PCBが着くことによって有害化していることが世界中で起きていることがわかると思います。どこで採取したプラスチックも危険だということがわかってきました。

プラスチックは、もともと添加剤が入っているということ、周りの海水中から汚染物質を吸着していること、それを生物の体内に運び込むということで、最近、有害な化学物質の運び屋ということがわかってきました。

トロイの木馬という風に表現する人もいます。生物の体の中に汚染物質すなわち兵隊を乗っけて、プラスチックすなわち木馬が入ってくるということになります。体の中に入ってきた後に、木馬に乗ったままなら良いのですが、兵隊は出てきます。プラスチックから化学物質も消化液のほうに出てきます。消化液のほうに出てきたものが、今度は脂肪の中に入っていきます。木馬すなわちプラスチック自体は大きいので、生物の体の中で脂肪に溶け込んだりはできません。やがては排泄されてしまいますが、兵隊である化学物質のほうは小さいので、身体の中にどんどん侵入できます。侵入して脂肪に溜まってくるということが、最近の研究からわかってきています。

少し前の研究では身体の中に入っても、プラスチックと一緒に排泄されるので問題ないというように考えられていたのですが、最近の研究ではプラスチックから汚染物質が溶けだして消化液に溶け出して身体の中に入っていくということもわかってきています。そういう意味で海のプラスチックごみというのは単なるプラごみではなくて、化学物質の生物への運び屋ということになります。

ただ、現在の汚染のレベルで、野生生物に何かプラスチック汚染に関係して化学物質の影響が目に見えて出ているかというと、そのような例はありません。室内実験をすると出てくる場合もあります。室内実験をするというのはどういうことかというと、今環境中で見つかっているプラスチックのレベルよりも10倍くらい多い容量を生物に曝露させると影響が出てくるという室内実験です。プラスチックに汚染物質をくっつけてメダカとかゴカイに食べさせてやります。そうすると肝機能の障がいがメダカやゴカイに起きてきます。メダカについては腫瘍も肝臓に出てくることが確認されています。室内実験は環境中の条件より10倍以上という高い条件ですので、いま環境中で起こっているかというとそうではないのですが、このまま放置してプラスチックが増えていくと、こういうことが実際起きるということを意味する実験ということになります。

 

◆東京湾に漂うマイクロプラスチック。化学繊維やスポンジ屑も…

最近単に海ごみとか海洋プラスチックという言葉より、マイクロプラスチックという言葉をお聞きになると思います。マイクロプラスチックが何者かをちょっと説明しますと、5mm以下のプラスチック全般を称して、国連の海洋汚染の専門家委員会では定義しています。ここにも持っているのは、これは海岸に落ちている比較的大きなプラスチックです。先ほどお回ししたのは、だんだん小さくなってきています。それがさらに小さくなって5mm以下になると、マイクロプラスチックというように呼ばれています。

どんなふうに集めるかを、東京湾で僕らが実際にやっている調査でお示しします。チャールズ・モア(映画で出てきた海洋汚染調査船の船長)がやったように小さな、目の大きさは0.3mmくらいのものを投入し、船をゆっくり走らせてやります。網の中に海水を通して、それを集めてやるとこの写真のように集まってきます。もちろん動物プランクトンとか川から来たものとか、自然のものもたくさん集まってきます。しかし明らかに緑色、青のものとか人工物とわかるようなものが浮いています。これがマイクロプラスチックということになります。水の中にもありますが、砂の中にもあります。

今日はお台場の砂を持ってきましたが、それに水を入れてかかき回したものを回しますので、ご自分の目で確かめていただければと思います。プラスチックは浮きますので、浮かせてみます(実験)。砂は沈みますが、明らかに人工物とわかる色のついたものもありますし、よく見ると小さく白いものもたくさんあるのがわかると思います。単なる東京湾お台場の砂で、汚染されているところの砂という訳ではありませんが、そこにも、このような形でプラスチックが存在しているということです。

マイクロプラスチックにはいくつかの種類、型がありますが、一番多いのはプラスチック製品の破片です。海の中でどんどん破片になっていきます。大きなものが紫外線でもろくなっていったなれの果てです。洗濯バサミは1年も使うともろくなってポキッと折れます。よく見ると折れるときに小さな屑が出ますが、紫外線で折れた屑がまさにマイクロプラスチックということになります。

東京湾の海水中で採ったマイクロプラスチックも回します。もともとは私たちが生活の中で使っていたような製品で、大きなプラスチックであり、マイクロプラスチックというものがあるわけではありません。それがどんどんボロボロになったものがマイクロプラスチックです。特に海岸でできやすいです。紫外線も当たりますし、熱も加わります。歩けないくらい熱くなりますし、波の力もあります。それが砕けて小さくなって波で洗われて沖に流されていくということになっています。

あと、化学繊維も寄与しているということが、最近言われています。私たちの洋服のポリエステルとかアクリルが洗濯の時にほつれて、下水に入っていることも言われています。例えばアメリカの研究では1着のフリースを1回洗濯すると、2000本のマイクロプラスチックの繊維が出てきたということも報告されています。

最近問題になっているのはスクラブです。マイクロビーズと言われるものです。ここにひとつ持ってきましたが、こういう洗顔剤に入っているプラスチックの粒です。数百μmで1mmの数分の1くらいの大きさのプラスチックの粒で、主に球形の規則的な形をしたものです。そうではないものもありますが。なぜこういった洗顔剤に加えられるかというと、プラスチックですから脂汚れになじみがよいです。顔の脂汚れがよく落ち爽快感が得られるということでよく使われるようです。使った後、下水に入ります。下水処理場で取り除くことができるのですが、雨が降ると下水があふれて川や海に流れて、結局海に入っていくということになります。

こちらは東京湾の京浜運河で網を引いた時に入ってきたマイクロビーズの写真ですが、こんな数百μmくらいの球形のものが海の中から見つかっています。そのほかにも発生源はありまして、メラミンフォームのスポンジです。こういうものです。みなさんもしかしたら洗剤を使わないので、環境にいいかなと思って使っておられるかもしれません。実際環境によさそうな顔をして売られていますが(笑)、環境には合成洗剤以上に悪いです。海に入っても分解されないようなメラミンというプラスチックの粒で作られていて、洗って屑になって出るということは、屑が海に入っていくということです。使っている人は小さくなってしまって困るのですが、海の生物はもっと困っています。こういうものがどんどん自分の棲家に入ってくるということで、問題になってしまうわけです。

 

◆東京湾のマイクロプラスチックを食べる小魚

マイクロプラスチックは海に漂っているわけではなくて、海を漂っているものを食べる生物に取り込まれているということも最近分かってきています。これは東京湾で釣れたカタクチイワシの調査の話です。64尾のカタクチイワシを学生が横浜で釣って調べてみました。大きさが10数センチのアンチョビーです。消化管の中を調べてみると確かにプラスチックが出てきます。1mmの数分の1、数百μmのポリエチレン、ポリプロピレンが出てきます。全部で64尾調べたのですがそのうち49尾からマイクロプラスチックが検出されています。最大で1尾15個出てきています。その中にはマイクロビーズも出てきています。このあとこのような生物が化学物質をつけて運ぶことが問題だと説明しますが、それ以前の問題として、ひとの顔の脂が付いたものが自分の食べる魚についているということは、非常に気分が悪いことではないでしょうか。

このようなものを意図的に製品に配合することは直ちに廃止すべきだと考えています。化粧品工業会では3月17日に工業会会長名で、約200の工業会加盟団体にマイクロビーズ配合を止めるように通達を出したそうです。それがどのくらい受け入れられるのかによりますが、業界は自主規制に向けて動き出したということで、よい傾向だと思います。

しかし問題は、マイクロビーズの配合さえやめれば、マイクロプラスチックの問題が解決するわけではないことです。海の中、あるいは海水中や魚の中で見つかるマイクロプラスチックの多数は破片なのです。マイクロビーズは1割に過ぎないということになります。意図的に入れているものですから、それが1割なくなるだけでも大きな効果ですが、残りの9割の破片のほうをなんとかしないと、私たちの食べ物がマイクロプラスチックに汚染されるという状況は変わらないということになります。

マイクロプラスチックも比較的大きなプラスチックと同じように、有害な化学物質を吸着していたり、もともとの添加剤を含んでいます。そういうプラスチックを魚が食べるということは、魚の体内に汚染物質が溜まるということを意味しています。ただ魚はマイクロプラスチック以外に餌からも汚染物質に曝露されています。動物プランクトンも汚染物質は吸着しており、それが餌として魚に入っていますので、今の段階でマイクロプラスチックだけから有害化学物質が入ってきて問題だということは言えませんが、こういうプラスチックの量がどんどん増える状態が続く場合は、そうは言えなくなります。魚が食べるプラスチックの量が増えていって、食べる魚を通して人間に運ばれる化学物質の量が増えていくことで人間に悪影響を及ぼす可能性が、将来出てくるかもしれません。

そういうことが起こらないように予防的な対策を取ろうということが、今、世界的に考えられています。何も手を打たないとすると、海に流入するプラスチックの量はこれから20年で10倍になるという予測も出ています。いまはまだ魚に入ったプラスチックを人間が食べたとしても、ほかの自然の餌のほうの寄与が大きいということであっても、10倍になったらそうは言えないことが十分考えられます。

ダボス会議という国際的な会議がこの間行なわれました。ここでは今世紀の後半には、海には魚の量よりもプラスチックのほうが多くなるという推定もなされています。ですから、いま打てる手があるならば、プラスチックの海への流入は減らしていかなくてはならないということで、いろんな国際機関が提言をしたり提案を出したりしています。

昨年ドイツでG7が開かれましたが、そこでも共同宣言の中の環境分野の宣言の中に、海のプラスチックごみの問題が取り上げられています。今年日本でもサミットが開かれますが、日本でも海のプラスチックの問題は取り上げようということで、環境省も努力をしています。ほかにもいろんな国際団体や国際機関が海のプラスチックについては警鐘を鳴らしているところです。

 

◆使い捨てのプラスチックを減らすこと。子孫に大地を受け継ぐために。

じゃあどうやって減らすかということを最後に考えていきたいと思います。国際機関と自分たちの生活はあまり関係ないと考えがちですが、実は自分たちの生活そのものを少し変えていくだけで、こういった問題をよくすることができると思います。

海のプラスチック製品の大半は陸上で使われたものです。陸上でのプラスチックごみの発生を抑えていく、海への流入を抑えていくことが大切ということです。ごみの収集の徹底、リユース、リサイクルという3Rを進めていくこと、そのための技術革新は大切なことになりますが、それだけでよいのでしょうか。

例えばリサイクルだけでごみの海への流入を防げるかということを考えてみたいと思います。日本はリサイクル率が高い国だと国際的比較でよく言われます。しかしそうはいっても100%のものはないのです。ペットボトルはリサイクル率が高いのですが、これでも89%です。いまはどんな飲み物もペットボトルになっており、量自体が増えているので、リサイクル率が高くても100%でなければ、海に出ていくプラスチックの量は増えていきます。荒川で河岸清掃をしている荒川クリーンエイドというボランティア団体がありますが、この団体が1年間だけでも3万本も集めています。写真は河岸清掃する前ですが、大量のペットボトルが捨てられていることがお分かりになると思います。いちばんリサイクル率が高いと言われているペットボトルですらこんな状態ですから、リサイクルすればそれでよいとは言えないのです。

それでもリサイクル100%になればよいのかということです。大量消費大量リサイクルで持続可能なのかどうかということも考えてもらいたいと思います。最初に8%の石油がプラスチックの生産に使われるという話をしました。その半分はプラスチックそのものの原材料、もう半分は輸送・加工のエネルギーです。ということはリサイクルすればそこでもまたこれと同等のエネルギーが使われるということになってきます。リサイクルするエネルギーについても、それが本当に必要なものなのかどうか考えてみなくてはいけないと思います。本当に必要ならばリサイクルすべきですが、そうでなければリサイクルする以前に使うのを止めるということを考えていくことが賢明だと思います。

例えば調布市の例ですが、人口22万人で、プラスチックのリサイクル率が高い市なのですが、ペットボトルをリサイクルする工場に集めて運ぶだけで、1年間に1億円かかっています。ほかのプラスチック製品もリサイクルしているのでそちらに2億円かかっています。そんなに大きな市ではないので、1億円とか2億円はかなり大きな数字になると思いますし、毎日ペットボトルを使えば使うほど、この数字は増えていくわけですから、なるべく使わないようにして他の手段で飲み物を飲むようにして、この数値を減らしていくことが大事だと思います。

そもそも加工するのにエネルギーを掛けているので、23区のように燃やしてエネルギーを得るのであれば、元の石油を燃やしてエネルギーを得る方が、はるかにエネルギーのコストというか収支としてはバランスが取れているということになります。ごみの問題ではよく3Rと言われます。減らす、再利用、リサイクルですが、最近は3Rにも優先順位があります。リサイクルと言いますが、実はリサイクルは最終手段で、まずは削減しなければいけない。ごみになるものを削減する、プラスチックを削減するということです。それから再利用、それでもダメなときはリサイクルということになり、まずは削減が必要です。

特に使い捨てのものが半分を占めますので、使い捨てのもの、レジ袋、ペットボトル、コンビニの弁当箱を減らすことが必要だと思います。

 

そんなことできるかと思われるかもしれませんが、世界的にはそんな流れになってきています。2014年8月にはアメリカのカリフォルニア州でレジ袋禁止の法案ができています。同じ年の11月にはEUが加盟国に、レジ袋削減の案を各国に作るように義務付けています。目標は1年1人40枚です。日本は1年にひとり300枚使いますから、かなり日本から見ればすごい目標ですが、こういう目標を達成するように義務付けています。

ペットボトルでは、サンフランシスコでは2014年3月からペットボトルでの飲み物の販売を禁止することになりました。ヨーロッパのいくつかの国でもそういうことが進んでいます。

ヨーロッパの国際会議をテレビで見ると、たいてい飲み物はガラスのビンで出されています。日本では残念ながらいろんな政党の会議など見ても、大抵ペットボトルが机の上に並んでいます。まず行政機関にイニシアティブを発揮していただきたいなと思います。

 

私たち人類は将来の子孫から地球を借りている存在です。アメリカの先住民の言葉で「我々は子孫から大地を借りて生きている」という言葉があります。借りたものを返す時、地球という惑星を子孫に受け継ぐときには、きれいな状態で返す必要があると思います。ひとからモノを借りておいて返す時に「汚れているけど毒じゃないからいいよね」「よごれているけど影響がないからいいよね」と言って返す人はいないと思います。きれいにして返すのが人間としてのやり方ではないかと思います。プラスチックの問題でも環境ホルモンの問題でも、影響はまだわからない面もありますが、分からないからと言って汚したまま地球という惑星を受け継ぐのではなく、きれいな状態にして、使う必要のない、残留性の高いものは残さないようにして将来の人類に地球を受け渡すことが必要ではないかなと思います。

非常に簡単なことをやればよいだけです。レジ袋をもらってしまう前にこれが必要なのか、家まで別な手段で持って帰れないかなと考えてみる。あるいはペットボトルで飲み水を買う前に、缶を買おうか家まで帰って飲もうかと考えてみる。あるいはコンビニのお弁当を買うよりも、5分10分時間をもうけて普通の食堂に入って瀬戸物容器のごはんを食べる。ほんの小さな努力をすることによって少しずつですがプラスチックが減っていくと思いますので、そんなことを考えてもらえればと思います。

時間も過ぎましたので、これで話を終わります。どうもありがとうございました。